数寄屋大工

お昼はソイジョイだけにして,朝から仕事をがんがん片づけて,行ってきましたの,竹中工務店まで.近代数寄屋についてのシンポジウムを聴くために.
わたしはどこへ出かけても,そこにどんな人が集まっている人が気になってしまう方だけれど,そのシンポジウムに集まっている人の顔つきや服装を見ると,かなり上質な(?)人々のような印象でした.上質という言い方もヘンなのですが,おカネがたくさんあっても下品な人や,知識はいっぱいあるのかもしれないけれどいちいち他人に文句をつけなければ気が済まないような人ではない,という意味で.こういう人が実質的に社会を支えているのね,という意味で.
シンポジウムは数寄屋建築設計の第一人者である老建築家と,有名工務店の棟梁と,銘木店の御主人によるものでした.
大きな大きな工芸品のような数寄屋建築.
もう手に入らない材料.
コンクリートの箱の中に近代数寄屋をはめ込むことはできても,都内においては,お庭のある1軒の家屋として屋外に建てるような社会ではなくなってきたこと.
大量生産のラインには載らない材料と,お金持ちで見識のある施主がいないと成り立たない仕事.
入場無料のシンポジウムだったけれど,とても感銘の2時間でしたわ.

いんちきフレンチプレス・カフェ

フレンチプレスのコーヒーはおいしいかもしれないけれど,マメにコーヒー豆を買う必要があります.
ふと思いついて,茶漉しでコーヒーをいれてみましたの.
おいしくてびっくり.
普通のモンカフェとかが,カフェの味になりますわ.
★用意するもの
目の細かい茶漉し
パイレックスの計量カップ
ティー・スプーン
タイマー
紙パックの1杯どりドリップコーヒー
★作り方
お湯を沸かし始めます.
お湯が沸いたところで,パイレックスの計量カップに1杯どりのコーヒーの中身を1つ分入れます.
タイマーを4分にセットします.
100℃より少し温度が下がったお湯をパイレックスの計量カップに140ml注ぎます.
タイマーオン.
スプーンでぐるぐるかき混ぜます.
4分経ったら,茶漉しで漉しながらコーヒーカップに注いでできあがり.
★良いところ
アルミパックで密封された1杯どりのコーヒーを使うので,いつでも新鮮.
フレンチプレスを使うより,後片付けはかんたん.
★悪いところ
すこしではあるけれど,どうしてもカップの底に粉が溜まってしまいます.

どこかに一杯分パックになったちょっと粗めのコーヒーの粉(ドリップ用の紙パックなしで)ってないのかしら.
これを飲んでしまうと,紙パックのドリップには戻れません.

黒目豆とオクラのスープ

戻さずに煮ることができる黒目豆を知ってしまうと,缶詰やパックの白いんげんが退屈に思えてしまいますの.

★用意するもの
黒目豆
オクラ
しょうが焼用豚ロース肉
おいしい塩
黒こしょう
★作り方
黒目豆はあらかじめ煮てておきます.
ざっと洗ってお鍋に入れ,水を加えて火にかけます.
沸騰したらいったんお湯を捨てて,新しい水に替えて,火にかけ,30分くらい煮ます.(ここまでは前の日でもOK)
お鍋に煮た黒目豆と水,ざくざく切ったオクラを入れて火にかけます.
沸騰したら,1cm幅に切った豚肉を入れます.
豚肉に火が通ったらできあがり.
スープ皿に盛りつけて,塩・こしょうを振りかけてできあがり.
★良いところ
黒目豆さえ煮ておけば,あっという間にできます.
豚肉はさっと煮るだけで,いいスープになります.
★悪いところ
黒目豆がないとできません.
他のお豆だと,今一つなかんじ.

塩こしょうでなくて,スープ皿に盛りつけてからおしょうゆたらりでもおいしいです.おいしい豚ロースさえあれば,コンソメなんていりませんの.

歌舞伎鑑賞教室

6月7月は国立劇場が歌舞伎鑑賞教室をしています.中学生や高校生が団体でやってきています.
去年は,松緑知盛&大河くんの安徳帝が見たくて,あまりのチケットの安さに3回も行ってしまったのでした.

最近読んだ本「勉強上手」に,「歌舞伎やオペラといった大人の遊びも早い方がいい」なんて書いてあったのですが,では,一番初めの演目は何がいいのかしら?

わたしが生まれて初めて歌舞伎を観たのは高校生の時の学校で行ったたぶん公文協の巡業で,次は大学1年の夏休みに行った歌舞伎座だったと思うのだけれど,誰を観たのか,まったく記憶に残っていませんの,ああ.公文協のときに何を観たのかは,今から思うとああ,あれだったのね,とわかるけれど,歌舞伎座は建物とお弁当を最初に買った記憶だけです,ああ.それ以降,観ようなんて考えたこともありませんでしたわ.
国立劇場に連れていかれている中学高校生も,その後,好きで観に行くようになる一部の生徒とそれまでに親に何回か連れて行かれたことのあるごく一部の生徒を除くと,あと20年もしたらお出かけの記憶しか残っていない,ということになるのでしょう.

今年の春休み,忠臣蔵の結構いい席をゲットしたので,誰と行こうかな,と考えて,お孫さま@中学生を誘ったわたし.わたしは単に菊たんが観たいだけなのですが,忠臣蔵は地味なので,平成中村座コクーンのように気軽に誰かを誘えるという感じではありません.でも,日本人の教養としては一度は観ておいていいものではあるし.というわけで,春休みで時間がたっぷりある中学生を誘うことになりました.
「インターネットでよく予習をしておくんだよ」と言っておいたら,口上人形までしっかり予習をしてきた様子.ご褒美として,幕間はお弁当ではなくて雪月花での贅沢ごはんにしましたわ.
その時のお孫さまの感想を,後日実家の母からきいたのですが,「伝統芸能といっているけれど,高級なものっていうわけではなくて,時代劇とおなじ」なんて生意気なことを言っていたらしい.そしてなぜか桟敷席=お酒が飲めるというのがしっかりインプットされていたらしい.
さあ,20年後にどれだけ記憶が残っているのでしょうか.

さてさて,7月から8月にかけての演目で,初心者の中学生を連れていくのに最適なのはどれでしょう?と考えてみましたの.

国立劇場「毛抜き」:お値段格安.お兄さんの解説あり,無料パンフあり親切.ただし,圧倒的に短時間.
新橋演舞場ヤマトタケル」:襲名の雰囲気はこれとない機会.いい席のチケット高い.伝統的な歌舞伎とはちょっと違う.
新橋演舞場「黒塚」ほか:襲名の雰囲気はこれとない機会.いい席のチケット高い.演目についてはわたしは見たことがないものばかりなのでよくわかりません.
シアターコクーン「天日坊」:これは観に行ってはまってしまいましたわ.中学生とか連れて行ったらめちゃくちゃ喜びそう.いい席にこしたことはないけれど,立見でも喜ぶよね.でも,これ歌舞伎じゃないよね.教育的な内容でもないよね.教育ママだったら「子供は見ちゃいけません」かも.「ママには内緒だよ」なんて孫と来ているおばあちゃんがいたら尊敬してしまいそうです.
巡業東コース「義経千本桜」:有名演目で鳥居前,吉野山,四の切と続けるので,教養的にはばっちり.子供が見ても安心な内容.お値段も良心的.ただし,巡業の悲しさで,すっぽんから忠信が出てくることはできないし,荒法師も3人でコンパクト.観るならば浅草公会堂でしょうか.
巡業中央コース「曽根崎心中」ほか:内容が中学生にはたぶん難しすぎ.
新橋演舞場桜姫東文章」:これってR指定でしょ.高校生だったら,観に行った生徒のうちの一部はものすごくとりこになってしまいそう.

とここまで書いてきて,国立劇場担当者が,限られた予算と限られた数の俳優で中高生が興味を持ちそうな演目を選ぶのってとても大変なことなのね,と思いました.おととしの「鳴神」とか「身替り座禅」とか,許容範囲内お色気物,ってかんじですわ.

15歳で人生決める?続き

はてなで「教育は機会において平等じゃない」についてのエントリが話題になっています.
これって,まさに看護師のヒエラルヒーの根源.
看護師は「手に職」の代表的な職業のひとつではあるけれど,「15歳で決めてしまっていいの?15歳で決めてしまった職業の一番下になるのよ」と.
たぶん親がそんなこと深く考えているとは思えません.学校の先生はどう思っているのかしら.それほど成績が良いわけでもない生徒がおカネをかけずに「手に職」をつけることができるのだから,まあよし,とせざるを得ないのかしら.
一方で,有名女子高から「どこの大学へ行く?」「看護大がいいかも」「じゃあ,○○大学はヘンサチは高いけれど看護としての歴史はそれほどでもないから,地味でも○○大学の方がいいよ」なんて助言も受けることができて,看護のエリートへの道を進むひとびと.

そして,もっと絶望的なのは,卒業後の継続学習の差.
看護のエリートのひとびとはcontinuous educationを必要とする職業の親の元に育っていたりするので,卒業後の継続学習は当たり前と思っているのに対し,準看コースのひとびとは「学校を卒業して資格をとったので目的達成」とまではいかなくても卒後学習に熱心とはいえなかったりします.
誰のせいでもなくて,なんとなくそう思うことが違うだけ.環境のせい.
だから本当は,より恵まれない層により良い卒後教育を与えられれば良いのかもしれないけれど,恵まれる層には十分な卒後教育,恵まれない層にはプアな卒後教育が用意されているのが現実.

でも,15歳で看護の道を選んだから,ちゃんと食べていけるのも事実.本人に資質とやる気があれば,進学コースを卒業してから助産師の専攻科へ行くことだってできるのは,機会に恵まれなかっただけの人にとっては,とてもすばらしいことだと思うので,何と言ったらいいのか,わたしにはよくわかりません.

15歳で人生決める?

高校卒業の18歳で医学部進学を決めるのは早すぎではないか,という議論をよく目にしますの.でも,今の日本では,18歳で就職する人もいれば,手に職系の専門学校へ進学する人もいるし,18歳でこのギョウーカイに就職してしまった,と思えばなんともないような気がします.アメリカ以外の外国では,日本と同じように,高校卒業後入学の国も多いはず.大学卒業後ではなく18歳で入学するからこそ,体力のあるうちに研修医になれるし.
世間ではあまり議論されてはいないことだと思うけれど,わたしがときどき気になるのは,高校の衛生看護科・5年制看護科のこと.衛生看護科だと,15歳で入学して,18歳で準看と高卒の資格がとれて,そのあと専攻科2年へ行くと20歳で正看の受験資格がとれます(いわゆる進学コースっていうヤツね).5年制看護科だと,15歳で入学して,20歳で正看の受験資格がとれます.この間文部科学省のサイトで,「早くから進路を決めている人には早く資格がとれる最適のコースです」なんて出ていたのを見たけれど,本当なのかしら?
外から見る限り,看護ギョーカイのひとびとは学歴にこだわりが結構あるような気がします.医学部はどこの大学であろうが6年.ヘンサチとおうちの財力によって学校を選ぶだけのはなし.でも,看護の世界はあまりにもいろいろなコースがありすぎ.4年制大学,3年制看護短大,3年制看護学校,2年制看護短大(今あるのかしら?),2年制看護学校,通信の2年制看護学校.思いつくだけでもこれだけあります.進学コース出身者は正看の中では一番下ということになっていて,「わたしは進学コースだから」というあきらめにも似た言葉を聞いたことは何回もあります.
そして,高校を卒業して,聖路加なり慶応なり北里なりに進学するには,ヘンサチもおカネも必要.でも,4年制を卒業する,を目標にした場合,3年生看護短大や3年制看護学校を卒業していれば,しばらく働いてから編入試験を受けることもできます.一方で,進学コースの人に対しては,編入試験の門戸を開いていない大学も少なくありません.また,就職先だって出身学校によって違うので,就職できる病院の卒後教育システムはかなり劣ると思うのです.卒前教育の差+卒後教育の差は,ため息が出るほど大きいのではないのかしら.主任さんとか看護師長のおうちの子供は,看護系に進学している場合,4年制看護大が多いような気がします(授業料が高いからタイヘンと言いつつ),
15歳でまだよくわからないうちに,「一番早く正看の資格がとれる」とひとから勧められるのかもしれないけれど,「正看のヒエラルヒーの中では一番下の身分とされているよ」と言ってはもらえていないと思います.たしかにヘンサチがそれほど高くなくてもおカネがなくても正看になれるのかもしれないけれど.
普通科の高校でなく,衛生看護科や5年制看護科を選択する中学生には,どんな進路指導がされているのかしら.

興業システムに思うこと

リピートしてきましたの,平成中村座
わたしの心を一番とらえたのは,関の扉.
この舞台はこの世の中に21回しかないのだと思うとせつなくなるくらい素敵な舞台でしたの.
菊たんの墨染はそれはそれはこの世のものとは思えないアヤしい美しさでしたわ.でも,お声が大変なことになっていました.
ガラガラ声.でもしゃべらないわけにはいかないので.
しばらく声を出していると,少しはいい声になるのだけれど,セリフで間を置くと,次の第一声はやっぱりうまく出てこなかったりしましたの.
まあ,中村座は昼か夜かどちらかがお休みの日もあったけれど,毎日は出ているわけで,風邪をひいても休めないし,お喉がどんなに痛くても,声を張り上げないわけにはいかないし.


舞台をみながら,わたしはずっと昔の超絶僻地病院の一人医長をしていたときのことを強烈に思い出してしまいましたの.
それはお正月明けの寒いころで,わたしは風邪をひいたのでした.替わりはいないし,わたしが風邪をひいても入院患者の人々は入院したままだし,突然休診にしたら,100人からの外来をどうさばくのか想像もできなかったし,当時の医局の状況では代診を頼んでもたぶん返事はノーだったと思うし,ということで,座薬でお熱を下げながら,仕事を続けましたの.
喉が痛いのに朝からずーっと喋りっぱなしなので,あっという間に声が枯れてしまいましたの.でも,翌日も翌日も喋りっぱなしでいなければならないので,ついには声が出なくなってしまいましたの.最後には,息だけでひそひそ声のように喋ると,看護婦さんが大きな声で言い直してくれる,という形で外来を進めました.風邪が治って声が再び出るようになったのだけれど,しばらく,元の声には戻りませんでしたの.
「やー,のりちゃん,ハスキーでセクシーな声だね」などとオヤジ医者に言われてもうれしくはありません.1週間たっても2週間たっても声は戻らなくて,もうわたしの声はこのままなのかしら,と.わたしは何のためにこの仕事を続けなくちゃならないの?と.気持ちは真っ暗でしたわ.
でもあきらめているうち,気づかないうちに声は戻り,以前と同じきんきんうるさい声のわたしにかえりましたの.今から思うと,耳鼻科にかかってリンデロンネブライザー(?)とか受けていればよかったのかしら,なんてことも考えるのだけれど,じゃあ,その当時のわたしにネブライザーを受ける時間ってあったのかしら?耳鼻科の診療時間はわたしも仕事中だし.


わたしの声がだめになってしまっても,日本中で悲しんでくれる人はたぶん5人以下.でも,菊たんのお声はかけがえのない絶対だめになってはいけないものなのです.
なので,チケットが多少お高くなってもいいから,週に1日は劇場お休みにしてくださいな,松竹さん.でも,今よりチケットがお高くなると,お客の入りは悪くなってしまうかしら.


ところで,今月はいろいろなところでお芝居がかかっているのに,福助橋之助のおふたりさんはどこにも出ていませんわいなぁと思っていましたが,ひょっとして,すべてのお芝居の役者さんに病欠とかが出た場合にそなえての女1男1のスタンバイなのかしら?