歌舞伎鑑賞教室

6月7月は国立劇場が歌舞伎鑑賞教室をしています.中学生や高校生が団体でやってきています.
去年は,松緑知盛&大河くんの安徳帝が見たくて,あまりのチケットの安さに3回も行ってしまったのでした.

最近読んだ本「勉強上手」に,「歌舞伎やオペラといった大人の遊びも早い方がいい」なんて書いてあったのですが,では,一番初めの演目は何がいいのかしら?

わたしが生まれて初めて歌舞伎を観たのは高校生の時の学校で行ったたぶん公文協の巡業で,次は大学1年の夏休みに行った歌舞伎座だったと思うのだけれど,誰を観たのか,まったく記憶に残っていませんの,ああ.公文協のときに何を観たのかは,今から思うとああ,あれだったのね,とわかるけれど,歌舞伎座は建物とお弁当を最初に買った記憶だけです,ああ.それ以降,観ようなんて考えたこともありませんでしたわ.
国立劇場に連れていかれている中学高校生も,その後,好きで観に行くようになる一部の生徒とそれまでに親に何回か連れて行かれたことのあるごく一部の生徒を除くと,あと20年もしたらお出かけの記憶しか残っていない,ということになるのでしょう.

今年の春休み,忠臣蔵の結構いい席をゲットしたので,誰と行こうかな,と考えて,お孫さま@中学生を誘ったわたし.わたしは単に菊たんが観たいだけなのですが,忠臣蔵は地味なので,平成中村座コクーンのように気軽に誰かを誘えるという感じではありません.でも,日本人の教養としては一度は観ておいていいものではあるし.というわけで,春休みで時間がたっぷりある中学生を誘うことになりました.
「インターネットでよく予習をしておくんだよ」と言っておいたら,口上人形までしっかり予習をしてきた様子.ご褒美として,幕間はお弁当ではなくて雪月花での贅沢ごはんにしましたわ.
その時のお孫さまの感想を,後日実家の母からきいたのですが,「伝統芸能といっているけれど,高級なものっていうわけではなくて,時代劇とおなじ」なんて生意気なことを言っていたらしい.そしてなぜか桟敷席=お酒が飲めるというのがしっかりインプットされていたらしい.
さあ,20年後にどれだけ記憶が残っているのでしょうか.

さてさて,7月から8月にかけての演目で,初心者の中学生を連れていくのに最適なのはどれでしょう?と考えてみましたの.

国立劇場「毛抜き」:お値段格安.お兄さんの解説あり,無料パンフあり親切.ただし,圧倒的に短時間.
新橋演舞場ヤマトタケル」:襲名の雰囲気はこれとない機会.いい席のチケット高い.伝統的な歌舞伎とはちょっと違う.
新橋演舞場「黒塚」ほか:襲名の雰囲気はこれとない機会.いい席のチケット高い.演目についてはわたしは見たことがないものばかりなのでよくわかりません.
シアターコクーン「天日坊」:これは観に行ってはまってしまいましたわ.中学生とか連れて行ったらめちゃくちゃ喜びそう.いい席にこしたことはないけれど,立見でも喜ぶよね.でも,これ歌舞伎じゃないよね.教育的な内容でもないよね.教育ママだったら「子供は見ちゃいけません」かも.「ママには内緒だよ」なんて孫と来ているおばあちゃんがいたら尊敬してしまいそうです.
巡業東コース「義経千本桜」:有名演目で鳥居前,吉野山,四の切と続けるので,教養的にはばっちり.子供が見ても安心な内容.お値段も良心的.ただし,巡業の悲しさで,すっぽんから忠信が出てくることはできないし,荒法師も3人でコンパクト.観るならば浅草公会堂でしょうか.
巡業中央コース「曽根崎心中」ほか:内容が中学生にはたぶん難しすぎ.
新橋演舞場桜姫東文章」:これってR指定でしょ.高校生だったら,観に行った生徒のうちの一部はものすごくとりこになってしまいそう.

とここまで書いてきて,国立劇場担当者が,限られた予算と限られた数の俳優で中高生が興味を持ちそうな演目を選ぶのってとても大変なことなのね,と思いました.おととしの「鳴神」とか「身替り座禅」とか,許容範囲内お色気物,ってかんじですわ.