膠原病診療ノートと混合診療

昨日は自分でもよくわからないエントリを書いてしまったので、しゃっきりした頭で続きを書きます。

研修医くんによくすすめる教科書のひとつに膠原病診療ノートがあります。簡素な装丁で文字ばっかり並んでいる本ですが、専門書としてはとてもお手軽なお値段で内容はとっても実践的で充実しています。
でも、この実践的というのは、診断治療職人芸としての実践的、であり、保険診療と現在のベッド状況では100%は実践できない内容です、しくしく。ほんとうはこれが理想なのだけれど、今の状況ではmodifyが必要な内容が書かれています。保険では許されない検査、入院させずに外来で引っぱらなければならないベッド状況。

混合診療が導入されたら、これまではできなかった検査もできるようになり、理想の治療ができるのでしょうか?
マスコミなどの理論からいけば、お金がある人にはできます。民間の保険で対応すればいいのです。
でも、すでに病気を持っている人を入れてくれる民間の保険はあるのでしょうか?

自費診療が本格的になり、それに対応する民間の保険が出てきたとして、今の生命保険のように、加入の時点での審査だけですむとは思えません。加入時の審査はきびしくなり、そして、自動車の任意保険のように、前年の利用状況によって次の年の保険料が変わってくる方式になるのでは、とわたしは思います。そうでなければ、保険会社の経営もなりたたないと思うし。
糖尿病の人はHbA1C7までは保険料50%増し、7から9は100%増し、9以上の人は継続不可、とか。
抗核抗体陽性の人は保険料20%増し、特定疾患認定患者は50%増し、前年にパルス療法を受けていれば200%増し、とかね。
また、商売はシビアなので、Aコース:心筋梗塞のときに心カテ1回OK、Bコース:確認カテ1回まで、Cコース:3年間にわたり保障、とか。Aコース:プレドニンのみ使用可、Bコース:シクロスポリンはネオーラル不可で後発品なら使用可、Cコース:ヒューミラも使い放題ですよん、とか。
どう考えても厳しいかんじ。

そして、混合診療が導入されたら、実は医療者サイドも選別されてものすごいことになりそうです。

東大および慶応で研修すれば富裕層の患者が多く自費診療が多いので、新しい検査・新しい薬を使いこなせる医者になれます。でもナントカ医科大学病院で研修しても、自費診療はあまり行われないので、昔ながらの診断・治療レベルの医者になってしまう!という危険があります。いくら本で読んでも、上級医の指導のもとに実際の患者さんで経験をつまないと診断・治療はできるようにはなりません。
膠原病診療ノートをそのまま研修医のお気軽基礎テキストとして使える環境と、膠原病診療ノートはあこがれのテキストとして机の上に置かれているだけの環境では技量の到達レベルは同じはずがありません。東大・慶応マッチング組の人と地方国立大学地元枠採用で卒後は地元でお礼奉公10年間コースの人では診断治療職人としてひとくくりにできなくなるくらい差がついてしまいそうです。どんなに自分の技量を高めたくても、超高ヘンサチでないと、はじめから道は閉ざされていることになってしまいそうです。そうなると、トップよりちょっと下くらいのレベルの人はUSMLE→日本脱出かしらん。

ため息が出そうですわ。

なかのひと