化粧品と宗教

ホメオパシーのことが,あちこちで話題になっています.
アトピー性皮膚炎をめぐる,民間療法での犠牲者については,ギョーカイ内では,良く知られています.カポシ水痘様発疹症から脳炎になったとか,重症のアトピーから敗血症で死亡した,とか.
すっごく高い水を買っていたり,不思議な漢方を飲んでいたり.教祖様の言うことを信じて,徳を積めばより救われるはずの宗教なので,異教のわたしには,入り込む余地がありませんの.

これのプチ版がなぞの化粧品.通販だったり,マルチ式だったり.
顔の湿疹が直らない人に,「いずれパッチテストをしましょう.まずは,次回,使っている化粧品を持ってきてね」と説明すると,びっくりするような場面に出会うことがありますの.
聞いたこともない,アヤシイ化粧品会社の化粧品で,定価1万円!なんていうのを,あまり裕福そうではない患者さんが,山ほど持ってくるのです.患者さんは言うのです.「自然派がいいと思って」
ヘレナ・ルビンスタインとかエスティー・ローダーで1万円なら理解できるけど,会社の住所が明らかにアヤシイ商品に1万円!なんて.それも,大切に大切に使っているのか,封をきってから,相当の月日が流れているような品だったりするのです.
ふつうの資生堂とかコーセーとかで,デパートではなく,スーパーで売っているようなラインのものでもいいじゃない,とわたしは思うのだけれど,そういうのは防腐剤とかが入っていて体に悪いんでしょ,と.あなたが使っているのにだって,パラベン入っているんですが.大手メーカーのだって,パラベン・フリーのラインはいくらでもあるんですが.と思うのだけれど,自然派化粧品教のひとには,説明がとても難しいのです.
それ1本分のお金で,たとえば花王のキュレルが一揃い買えますよ.開発費用だって,商品の原価だって,ずっとかかっているはずだから,ずっとお買い得ですよ,と思うのだけれど,イトーヨーカドーだとかマツモトキヨシで売っているようなものでは,ありがたみがないのです.
ひとと違うことをする,たくさんお金を払う,が徳を積むことですから.

なんだか深いため息ですわ.