August is the cruelest month

8月29日の奈良死産事件について、マスコミがあれこれ騒いでいます。
「かかりつけ医がいない妊婦」ということになっているけれど、わかりやすい言葉でいえば、「妊婦検診をうけておらず、母子手帳を交付されていない妊婦」なのだと思います。そして、それが今回の問題の重要なポイントなのだと思います。でも、それについてはほとんどのマスコミが完全スルーです。
マスコミの論調では、受け入れを断った医療機関に問題あり、なんて方向の話が多いようです。

奈良県立医科大学の発表を見て、私はなんだかとても悲しくなりました。その夜の病棟がどんな大変ぶりであったかは、産婦人科医ではないわたしでも容易に想像が付きました。そしてその医局のホームページを見ると、医局員の数の少なさにため息が出そうになりました(関係者の皆さんごめんなさいね)。この人数で二人当直をしているのですから、1ヶ月のうちに当直がまわってくる回数は結構なものになりそうです。ひょっとして、教授や准教授、講師なども当直をされていたのでしょうか?日ごろの仕事の忙しさをリフレッシュするための夏休みはとれているのでしょうか?関連病院の1人医長などに夏休み用の代務を出すことは可能なのでしょうか?おせっかいに心配してしまいます。あんな報道をされて、奈良県立医科大学産婦人科のせんせいの心が折れてしまわないか、胸が痛くなります。

医局でとっている新聞で、この事件について書かれた社説を読んで、書かれた方の見識の程度に心の底から悲しくなりました。これを書いた方には、奈良県立医科大学の発表を読んでその内容を理解した上で、もう一度社説を書いていただきたいと思います。本当の問題点を、小学4年生でもわかる程度のやさしい日本語で書いていただきたいと思います。新聞に書かれていることが真実であると思っている人が、世の中には大勢いるのですから、真実に近いものを書いていただきたいです。

1.周産期医療をめぐる情勢が非常にきびしい
2.マスコミの報道のピントがずれている、あるいは報道の受け手に迎合した報道をしている。
このふたつは本来別の問題なのですが、1に関連した案件でも2のフィルターを通ってしまうことで、報道されること自体がとんでもない周産期医療破壊兵器になってしまっているのかもしれません。

昨日は奈良大淀病院事件の第2回公判で、今日は福島大野病院事件の第7回公判でした。
この国の周産期医療はどういう方向へ向かっていくのでしょうか。