ホームベーカリー

わたしの実家では、毎朝のパンは自家製です。ナショナル・ホームベーカリーで焼きます。材料を計量して、規定どおりに投入して、スイッチを押すだけ、なのでとっても簡単。ちなみにわたしの母は、「おとうさんが作るパンが一番おいしい」と言って、定年になった父をパン焼き係に任命してしまっています。

なぜ、わたしの実家ではホームベーカリーでパンを焼くようになったのか、というと僻地問題と関係があります。ホームベーカリーはもともとは発売されたときに母が面白がって買ったものでした。はじめは面白くてもあとは死蔵された調理家電になっていました。そしてその何年かのち、大量生産の食パンしか手に入らない土地で暮らすことになったときに、引っ張り出されて使われるようになりました。
「添加物の入らない安全なものを食べたい」ではなくて、「○○パンじゃおいしくない」というのが母の言い分でした。○○パンより、ふつうのカメリアで作るホームベーカリーのパンの方がおいしいから、と。実家に帰るたびにわたしも食べていましたが、確かにそうでした。デパ地下に入っているようなお店や個人のおいしいパン屋さんのパンに比べれば、ちょっとおちるかも知れないけれど(わたしの舌ではそんなに遜色なく感じます)、大量生産のパンよりははるかにおいしいのです。

現在は都市部に暮らし、ブルディガラのパンでもメゾン・カイザーのパンでも手に入る両親ですが、自家製パンはずっと続けています。メゾン・カイザーのパンはわざわざ出かけて結構なお支払いをしないと手に入りません。サンジェルマンのパンはちょっとのお出かけで手に入りますが、つぶさないようにおうちまで持って帰ってくる必要があります。ということで、味以外に利便性と経済性にも優れた自家製パンが続いています。カメリアだけでなく富沢商店の粉を買って、胚芽パンにしたりフランスパン風にしたり。毎日食べるには十分おいしいのです。実家のホームベーカリーは2代目になりました。

わたしもホームベーカリーでパンを焼く生活にちょっとあこがれますが、発酵や焼き上げは30分ではできないので、当分おあずけですわ。

なかのひと