ムンク展

ムンク展に行ってきましたの。
「叫び」はありませんでした。どうしてもオスロからは持ち出せないのでしょう。
「吸血鬼」と「リンデ・フリーズ」がよかったです。
ムンクというと「叫び」と「マドンナ」というイメージがありましたが、明るい色調の伸びやかな絵がたくさんで、印象が変わりました。
チョコレート工場の社員食堂の壁画というのは、素敵だな、と思いました。
働く人のための日常のエリアに本物があるなんて。

今回は藝大美術館へは足を伸ばしませんでしたが(ムンク展は濃厚だったので、のうみそが疲れてしまい展覧会のハシゴは不可能でした)、藝大美術館へ行ったときにはいつも思うことがあります。ああ、わたしは選ばれなかった人なんだ、と。選ばれる努力もしなかったし。

藝大美術館の1階の学生食堂の椅子に座ったことはありませんが、2階から覗き見るに、ヤコブセンと思われる椅子が並んでいます。
ヤコブセンのアント・チェアがもともと製薬会社の社員食堂用にデザインされたもの、というのは有名な話です。
今の日本で購入すると1脚4万円くらいするはずです。
学生食堂なので、椅子はびっちりならんでいます。
藝大がパチモンを置くはずがないので、椅子代だけですごいことになりそうです。
学生さんたちは本物の椅子に座って、普段のご飯を食べているのです。

わたしが以前働いていたことのある病院の職員食堂の椅子はヤコブセン風の椅子でした。もちろんパチモンなのですが、いろいろな色の椅子がずらーっと並んでいて、それだけ見れば、けっこういい感じでした。ひょっとしてインテリアコーディネイトを担当した人が、ヤコブセンの椅子が並んだ職員食堂というのをやってみたかったのかもしれません。ただし、ご予算がないので、パチモンでがまんしたのかな、と。
その職員食堂で遅い昼ごはんを食べていた頃は、藝大の学生食堂の椅子を知らなかったので、どうせ、ふつうの病院では本物をずらーっと並べることは不可能なのだから、これはこれでいい感じ、と満足していました。

上野に行くたびに、パチモン・ヤコブセンがわたしの人生の象徴のような気がしてしまい、ちょっと寂しい気分になりますの。

なかのひと