明治マーブルチョコレートの思い出

もう、ずっと前のこと。
同じ病院の女のせんせいからある日電話がはいりました。
「のりちゃん、悪いんだけど、わたしの病院の荷物をまとめて、わたしの実家に送ってもらえないかしら」
そのせんせいは、しばらく前から体をこわして、病院を休みがちだったのですが、正式に休職することになったのです。
文献はまとめてね、紙類は捨てていい、使いかけの文房具で欲しいのがあったらテキトウに使ってね、といわれたわたしは、言われたとおりに段ボールに荷造りをして、着払いで荷物を送りました。捨てていい、欲しいのがあったらどうぞ、と言われても、なんとなくそのまま全部荷造りしてしまったのを覚えています。
ただし、ひとつだけいただいてしまったものがありました。
それは、明治マーブルチョコレートのマグネットです。マーブルチョコレートの筒型の箱を半分にした形のマグネットで、ひょっとしたら、「ビクシリン」なんて書いてあったかもしれません。古い、明治製菓ノベルティグッズです。ちょっと欲しかったし、何かをお駄賃としていただいたほうがそのせんせいも気が楽かな、と思ったので、いただいてしまいました。
その後、そのせんせいは健康を取り戻すことなく、亡くなられました。最後のころはお気の毒すぎて、お見舞いにいくのもはばかられました。
マーブルチョコレートのマグネットはわたしのお気に入りでしたが、何回も何回も引越しを繰り返すうちに、いつの間にかどこかへいってしまいました。

きょう、いろいろなブログで、神戸の麻酔科のせんせいの話を読みました。そのせんせいの机周りの荷物はもう誰かが片付けたのかしら。

ニュースの記事を読んで、なんだか悲しくなりました。病院の毒薬を持ち出した悪者、というかんじになっていて。

もう、あなたの心をわずらわすものはありません。
安らかに、お休みください。
ご冥福をおいのりいたします。

なかのひと