もうすぐクリスマス

今日、おうちに帰ったら、日本ユニセフ協会から募金のお願いのダイレクトメールが来ていました。
「世界の子供のために」3,000円のご支援でビタミンAを646人分届けることができます、と。
ずっと前に、お友達から聞いたはなしを思い出しましたの。

お鍋のお湯を頭からかぶったとして、男の子が搬送されてきて入院しました。後頭部から背中にかけてのやけどです。病室でたまにお母さんに会うことはあったけれど、お父さんはみかけませんでした。身なりや言葉遣いから、あまり恵まれない境遇にいることがよくわかるような子供だったそうです。いつも看護婦さんにまとわりついて、かまってかまって攻撃をするので、結構しごとの邪魔でした。
ある日、もうすぐ産休にはいる看護婦さんが何かで男の子を注意したところ、男の子はいきなり、妊娠中の大きなお腹めがけて、けりを入れました。そして、おなかをぼこぼこ叩いたのです。お友達はびっくりして、彼を捕まえ、「そこにすわれ」と命じて、神妙な顔をして説教をしました。

看護婦さんのおなかの中にはもうすぐ生まれるあかちゃんがいます
あなたはあかちゃんをけっとばした
とても悪い子だ
看護婦さんとおなかのあかちゃんにあやまりなさい
こんな悪い子は病院には置いておけません

そんなかんじのことを男の子に言いました。そうしたら、彼は火がついたように泣き出して、「ごめんなさい、ごめんなさい」と言い、看護婦さんが「もういいよ」と言ったら、急にへんなことを口走りだしました。「おとうさんがやかんのお湯をかけた」「おとうさんがやかんのお湯をかけた」
婦長さんに報告して、「児童相談所かな」などと言っていたら、翌日、おとうさんが病院から彼を連れ去ってしまいました。退院ではなくて。
「クリスマスが近かったけれど、クリスマスプレゼントなんてもらったことはあったのかな。病院のほうがおうちよりよかったんだよね。」

日本にも貧困があって、わたしはそれを2群に分類できると思っています。1群は、病気や不運が重なって困窮している人たち。もう1群は、ある意味で特殊な、その中にいる人が抜け出そうという発想を持っていない(わたしにはそう見えてしまいます)不思議な貧困です。ルイ・ヴィトンは買えるのだけれど、健康保険は3ヶ月国保だったりするような貧困。そんな貧困のなかに生まれた子供たちは、牛乳や果汁100%のジュースのかわりに500のペットボトル入りの清涼飲料水を与えられ、義務教育に上がるまで、集団生活をさせてもらえなかったり(幼稚園や保育園に行かせてもらえない!)しています。生まれる前の話でいったら、母子手帳をつくってもらっていなかったりね。学校に行かせてあげたいのだけれどお金がなくて行かせてあげられない、ではなくて、学校に行かせるという発想がないという貧困。

わたしが、ユニセフ協会に募金をしたり、ユニセフのグリーティング・カードを買ったりすることは簡単です。そして、確実に世界の恵まれない子供たちのために、何かができます。
でも、日本に暮らす、恵まれない境遇に生まれてしまった子供たちに何かをしてあげることはできません。親の暴力におびえたり、放置されたりすることなく、あたたかなごはんを食べたあと、ぐりとぐらのおきゃくさまか何かを読んでもらいながら汚れていないお布団でパジャマを着て寝ることができる、そんな生活を与えるための何かをしてあげる方法はありません。
そのことがとっても悲しいです。

アクセス解析