もうひとつのtomorrow 第5話

では,TBSを追い越して第5話ですわ.

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市役所.市長と保健所長の三浦友和が話をしている.
「院長から夜間小児救急診療の休止の提案があった件,どうして進展しないんですか?」
「市議会がうんといわないんだよ.院長だって,市議会の承認をえないで物事を進めてもらっては困る」
「石井先生1人で,急患に対応しろっていうのは無理だ.その気になれば,彼は継承でいつだってやめられるんです」
「でも,議会が」
「市長,大学の小児科の教授が代わったこと,前に話しましたよね.今度の教授はやり手だ.日赤が総合周産期母子に格上げになる話,しましたよね.もし石井先生が今辞めたとして,たぶん,後任は来ませんよ.ここによこすくらいなら,日赤にやります.僕が言うのもなんだけれど,産婦人科だって,ここから引き上げた分,そっくり日赤だったでしょ」
「いくら大学だからって,地域医療を見捨てる,ってのはおかしいよ」
「ひとがいないんだから,日赤に集中して投入しないと,この医療圏が駄目になる.いま,石井先生が残っているっていうのは僥倖だ,くらいに思わないと.彼はこの市で生まれ,育ったから,ここにいることができる.一応医局人事をはなれて,継承までのお礼奉公のつもりで市民病院にいる.ここで生まれ育った人間以外に,ここの住民に奉仕しろといっても,なかなかできない.彼が病院にいてくれるから,最低限の保障にはなる.使いつぶすわけにはいかない」

医局夕方.医局のメールボックスにへんな手紙が入っている.差出人がない.封を切るたまき.病棟へ向かうたまき.糖尿病教室の患者名簿を見るたまき.

病棟でたまきが手術記録を書いている.そこへ,耳鼻科医のクラノスケ.
「あ,いた.たまきちゃん,僕,ちょっと気になる患者がいるんだけど」
「気になる患者って?」
「外科で入院している患者なんだけど,ひょっとしてスティーブンじゃないかなって?」
「スティーブン?」
「僕の患者の隣のベッドにいる35歳の女性なんだけど,発疹が出てて,目が赤いんだ.」
「外科なんていってんの?」
「しらない.今日はオペ日だし,誰も病棟にいない」
「行ってみる」

外科・耳鼻科病棟のナースルーム.たまきとクラノスケが当該患者のカルテを見ている.
「ふーん,アレビアチン飲んでるんだ.熱もでてるのね.外科,なんにも検査してないのかな?」
「じゃあ,行こう」

ナースルームに戻ってきた二人.
「スティーブンだわ.クラノスケありがとう.こりゃ大変.通報しなきゃ.」
手術室に電話をかけるたまき.今,手術中なのでおわってから,とにべもない返事.
たまき,しばし考える.
どこかへ電話をかけているたまき.
大学の医局のようである.
猛烈な勢いで紹介状をかきはじめるたまき.

手術場の更衣室で着替えているたまき.術衣になって,外科が手術をしている部屋にはいっていく.ナース鵜飼麻酔状態で,麻酔科医はいない.
いきなり入ってきたたまきに驚く外科医の陣内孝則竹野内豊
「そのことなら,今日は皮膚科がなかったから,あした皮膚科に対診を書くつもりでいたのに」と竹野内豊
「でも,あれはスティーブン・ジョンソンなのよ.目結構やられてる.大学に話はつけた.今日,送りなさい」
このアマうるさいぞ,という顔の陣内&竹野内.
「明日まで待つともっと悪くなるわ.失明するかもしれない.それでいいの?訴えられるわよ.」
陣内「浅利,お前,手おろしていいから,この目医者さんのいうとおりにしろ」
モニターでたまきの姿を見つけた北村が手術室に入ってきた.

外科・耳鼻科病棟.
たまきが浅利を相手にどなりまくっている.
「クラノスケにあとでちゃんと礼を言いなさい.あんたたちなんて,特別契約なんていってあたしたちよりいい給料にしてもらってんでしょ.ちゃんとやれ」
浅利はたまきの勢いにおびえている.

救急車に患者を乗せた後,乗り込む浅利.おびえた目をしている.

大学病院の救急外来入り口.待ち構えていた医師たちに患者が引き渡される.ただし,浅利は病棟までついていく.初めて来る他学の大学病院に緊張している浅利.

浅利が医局に戻ってきた.医局のラウンジでは,クラノスケとたまきと北村が桃をむいて食べている.
「お帰り」とたまき.「桃食べる?」
半泣きがおの浅利があたまをぺこんと下げる.
「クラノスケセンセイが今日のお前の当直,全部かわってくれるって.これ食べたら,さっさと帰って,いやらしいことでも考えて,早く寝ろ」と北村.
泣きじゃくる浅利.

北村の部屋.北村とたまきの激しいベッドシーン.
「今日ね,ヘンな手紙が来たの.たぶん,前に糖尿病で足アンプタした患者じゃないかと思うんだけど.患者に対する態度が悪いとかいろいろ書いてあって最後に“お前とセックスするやつの顔がみたい”って書いてあった.糖尿病教室でちゃんと話をきいていないから,その患者を怒ったのよ,あたし」
「ふーん,顔みたいですか?僕でーす,か?オレ,その患者知ってる?」
「たぶん,ルンバールだったから知らないと思う」
「片足なくなってやけになってんのかね.絶望感のなかでおまえの白い裸思い浮かべてんだよ,きっと.あんたが想像しているたまきセンセイのからだはこんなです」と北村はたまきの体を引き寄せる.
「ちょっと怖い」とたまき.
「“たまきセンセイとセックスしてるのは,あんたの足を切断した若いつばめのヤマシタでーす”なんていったら大変だろうな」とちらっとたまきの顔色をうかがいながら言う北村.
「ヘンなこと言わないで頂戴.あたし,ヤマシタちゃんとはキレイな関係だから」と北村の視線に気づかずに言うたまき.
「オレとはきたない関係なのか?」
かぶりをふるたまき.