もうひとつのtomorrow 第7話

ヤマシタくんの車がZ4でよかったのか,とまだ悩んでいるわたし.マツダ・ロードスターは若い子向きじゃないし,プジョー206CCだと,軽すぎ.バルケッタだのスピードスターだのなんていったらとんがりすぎなので,とりあえず,Z4と.若き日の阿部ちゃんはユーノス・ロードスターでいかが?

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大学の眼科医局.たまきと医局長が話をしている.
「これはまだ内々の話なんだけれど,勝村先生が開業することになった.来年の9月だ.で,社保をどうしようか,ということになった.君みたいな硝子体術者をあんな病院にずっとひとりで置いておくわけにはいかない.というか,勝村先生の開業は市民病院の近くなんだよ.君にやってもらいたいのは硝子体だ.でだな,来年の春に一旦大学に戻って,8月から社保,って考えている,どうかな?」
しばし考え込むたまき.
「まあ,来年春は移動だって思っていたけど,日赤とか,は駄目ですよね」
うーん,と言って考え込む医局長.
「そう来ると思ったよ.社保は上が大甘だから,あそこのNo.2はなかなか行きたがるひといないんだよね」
「だって,センセイはさっきから硝子体,硝子体っていうけれど,あそこ廻る子なんて,シロできたら十分っていうか,シロは専門医とるまでなんてやつばっかしじゃないですか.それだったら済生会のほうがまだましだわ」
「それはわかる.でも,指導医制度のことがあるから,ちょっと人事がむずかしいんだよ.それとも,○○総合にでも行く?あんな遠くまではやでしょ」
ふくれっつらになるたまき.
「市民病院はどうするんですか?」
「内科や小児科との関係もあるから,週3の外勤でつなぐのがいいんじゃないかと思ってる.まだ,内緒だよ」
「…そうですか.9月までは?」
「まあ,誰でもいいから置いておこう,と.面倒なオペは日赤にまわすことにしてね」

高速道路を走る,たまきのアウディ
マンションに戻ってきて,しょぼーん,としているたまき.冷蔵庫から缶ビールを出して,飲む.

休日の病棟.術後患者の診察を終え,足取りの軽いたまき.
スーパーによって,いろいろと食べ物を買い込む.
北村のマンションの階段を上がっていくたまき
まずキッチンを片付けてから,料理にとりかかるたまき.
北村はベッドのなかでもぞもぞしている.
シャワーをあびている北村.
濡れた髪のままの北村,たまきにまとわりつく.

レンタルショップの駐車場でZ4から降りるヤマシタ.私服姿のヤマシタはちょっと場違いなくらいセンスがいい.ショップの中で,いつかのリストカット女とすれ違うが,ヤマシタは気づかない.リストカット女の横には男がいて,ヤマシタの姿に面白くなさそうな顔をする.

だらだらと食事を終えた北村とたまき.たまきは洗濯をし,部屋の掃除をする.
キッチンで紅玉をむいて,お皿にもり,ラップをかけて冷蔵庫に入れるたまき.
きれいになった部屋で紅茶を入れるたまき.
紅茶を飲み終え,ティーカップを洗うと,じゃあね,と部屋を出るたまき.

病院の光景.
外来をこなすたまき.
救急外来で脱臼の整復をするヤマシタ.
助手ではなく執刀している浅利.

再び休日.午後のようである.
たまきが日直をしている.
医局のラウンジで所在なさげなたまき.
子どもの喘息にパターンの吸入の指示を出して医局に上がってくるたまき.
JAMAを読んでいる.
テレビをつけるが,面白そうなものはなくて,すぐにスイッチを切るたまき.

レンタルショップ前.
Z4から降りて,ショップへ向かうヤマシタ.
リストカットカップルがこちらへ向かって歩いてくる.
リストカット女がヤマシタに手を振る.
ヤマシタがにこにこした顔をする.
「この野郎,ちゃらちゃらしやがって」という声ともに,男がナイフを出して,ヤマシタに向かってきて,ヤマシタの腹を刺した.
きゃーっという女の悲鳴.
男も放心状態で座り込んでいる.
倒れてうめき声を上げているヤマシタ.

救急隊からの電話を受けているたまき.
「ヤマシタせんせいっていって,そちらのドクターらしいです」
という救急隊の声に顔色が変わるたまき.
一瞬の考え込みのあと,電話交換手に電話するたまき.
「コード・ブルー,コード・ブルー,救急外来.コード・ブルー,コード・ブルー,救急外来」
たまき,電話をかけている.

北村のマンション.北村が電話に出ている.
「なんで,受けちゃったんだろう,うちでなんとかできないよね」と泣き声のたまき.
「落ち着け,すぐ行くから.これからオレがいうもの,用意しろ.あと,救急車帰すな,絶対に帰すな」

救急外来にやってきたのは小栗と浅利のみであった. それでも2人はてきばきと輸液やモニターの用意をしていく.おろおろするだけのたまき.
すぐに救急車到着.
ストレッチャーのヤマシタに駆け寄るたまき.自発呼吸はある.意識もある.
北村到着.
「どうせ,ウチの外科なんて浅利しかすぐには来れないんだろう.浅利,日赤に連れてくぞ」
いろいろなものがつながれたヤマシタが再び救急車に乗せられる.

救急車がでたあと,わんわん泣いているたまき.
小栗がたまきに言う.
「今日はどうせぼく当直だし,たまきさん,うちに帰っていいよ.もう,休んだほうがいい.あ,でもたまきさん,高速で帰るんだよね.お茶でも飲んで,一休みしてから帰って.交通事故おこしたらしゃれにならないから」
たまき,泣きながらうなづいている.

医局で泣きながら缶のお茶を飲んでいるたまき.
白衣を脱ぐたまき.
高速道路を走るたまきのアウディ.80km/hrしか出していない.