もうひとつのtomorrow 第8話

たまき先生の手術シーンも入れたいのだけれど,眼科の手術って,外から見てると動きが少なくて,画面としてはいまひとつですわね.

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赤十字病院の救急外来.
そうっとたまきが入ると,中は閑散としている.
下腿の縫合を受けている患者.点滴コーナーに数人.
「緒川先生,あの整形外科の男の子ならすぐにオペ室に上がりましたよ.北村先生が連れてきてくれたので,ざーっと検査してすぐに上げることができた.さっきまではここもひどかったけど,ようやく落ち着いたところだ」と縫合をしている60歳近い医師.

たまき,手術室前の廊下へ向かう.人が大勢いるので,ちょっとためらって,医局へ.
医局のラウンジには誰もいない.
タクシーを拾うたまき.
たまきのマンション.お湯を沸かしてコーヒーをいれるたまき.

夜の赤十字病院救急救命センター病棟.
入り口に机が置いてあり,守衛のおじさんが座っている.
面会者に対して,身分を証明するものの提示を求めている.
「なんでこんな面倒なことをするんだ」と見舞い客の中年男がおじさんに詰め寄る.
看護師長らしいナース.
「本当にすみません.今日,事故で運ばれてきた患者さんのところに見舞い客を装ったマスコミがやってきて写真を撮ろうとしたんです.本当に申し訳ないのですが,ほかの患者さんのプライバシーの問題もありますし,今日はこうさせていただいています.本当に申し訳ありませんがご協力をお願いいたします」
そこへたまき.
病棟から出てくるケーシーを着た30代の男.
「あっ,緒川先生」
男はたまきを物陰に誘導する.
「雑誌社のカメラマンがやってきて,整形の子の写真を撮ろうとしたんだ.ちょうどそれを男の看護師が見つけて,大騒ぎだったんだ.捕まえて,院長室に拉致しているらしい.看護部長がめちゃくちゃに怒って,編集長がやってくるまでは帰さないって言っていて,警察にも連絡して,すごいことになっている」
「で,ヤマシタくんはどうなったの」
「無事,オペ室から戻ってきて,安定している.僕が病室まで案内するよ」

救命センターのICUのユニットではなく,その横の個室にいるヤマシタ.眠っている.挿管はされていない.シリンジポンプはいくつか付いている.
枕元に上品そうな両親がいる.
入り口ドアの前にモニターが出ている.
ドアをノックするたまき.ヤマシタの母が出てくる.
「○○市民病院の眼科の緒川です.ひとめヤマシタくんに会いたくて」
「うかがってます.いつもくだものの皮をむいてくれる美人のお姉さんだって,どうぞ,寝てます」
ヤマシタの顔を確認すると,「今日はこれで失礼します」と部屋を出るたまき.

ベッドの中で眠れないたまき.

翌日の朝.市民病院の医局.
本日夕に緊急医局会があります,という貼紙.

手術室.阿部ちゃんが大腿骨骨折の手術をしている.阿部ちゃんが術者で助手はみなれない若い男である.

司会のクラノスケ.月曜日なのに三浦友和の姿もある.
「整形外科は今週は日替わりで,来週からはしばらくの間,1週間交代で大学院生を出してくれることになりました.宿舎は病院のアパートではあんまりなので,交渉して,○○ホテルをとってもらうことにしました.」
「やはり,現状で救急外来の維持は困難なので,当院としては,当直は当直業務に専念する,という方針にしようと,じゃあ,寺田先生から」
副院長の寺田農
「わたしとしても,地域医療を守りたい,でも地域医療を守る人を守りたい,といろいろ考えたのですが,やはり,今の状況で救急外来を維持していくのはなかなか困難です.皆さんの中には医局から次年度のことについて話が出ているという方もおられると思いますが,縮小の提案をしてきた医局が複数あります.そこで,病院として,やはり市側にきちんと現状を伝え,市議会を説得する方向にしたいと思います.院長代行として,ここはわたしの首をかけてでも,と考えています」

またまた当直のたまき.検食はまだ手がつけられていない.
院内ポケベルが鳴る.救急外来へ降りていくたまき
5歳くらいの男の子.今日の夕方から左上肢を動かさず,動かそうとすると痛がる,という.
「レントゲン呼んでください」と救急外来のNsに言うたまき.
ナースが電話交換に電話をかけ,放射線科のon call技師を自宅から呼び出した.
X線写真をみるたまき.ちょっとみたところ,骨折はなさそうである.救急外来においてあるマニュアル本の肘内障のページを見た後,患児とその親を呼び入れるたまき.
何回か整復をためしてみるけれど,児は痛がるばかりである.
時計をみるたまき.21時を過ぎている.
「レントゲンでみると,骨折はないみたいだけど,今日はお風呂にいれないで,明日朝一番で整形外科にかかってくださいね.もし,おうちに帰ってから,ものすごく痛がったり,なんかヘンだったら,もう一回連れてきてくださいね」と説明し,帰宅させた.
次の患者はコンタクトレンズがとれなくなった女子高生.おてのものでレンズを外すたまき.

あくる日,眼科外来にはいってくる阿部ちゃん.診察中のたまきをちょっと,と.
たまきと阿部ちゃんが眼科外来の倉庫?にいる.
「きのう,子供帰したの,ちょっとまずいことになってる.遠慮しないで,呼んでくれたらよかったのに」と阿部ちゃん.
「え,あの肘の子?」
「そう,あの後,痛がるからって日赤に連れて行ったらしいんだ.上腕骨顆上骨折.レントゲン見たよ.素人にはわかりづらい」
「それでどうなったの?」
「一応,マヒとかはなかったし,血行障害もなかったし,まあ大丈夫だったんだけれど,親が病院に来て,今,副院長が対応している」
言葉が出ない,たまき.
「あたしはどうすればいいの?」
「いや,副院長が何か言ってくるかもしれないから,それまで待てば?」

外来を続けるたまき.表情が暗い.