もうひとつのtomorrow 第9話

今日のオペ室シーンは一応このドラマのハイライトなのですが,医学的な考証がちょっと自信ありません状態ですの.突っ込みがある方はご指摘くださいませ.

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市議会.三浦友和保健所長がいる.
「これを明かしてしまうと,市民は混乱するかもしれないけれど,来年の3月で病院の機能は格段に落ちます.1月に入ると,縮小する科では,外来患者の整理が始まります」
「4月以降は,当直表を組むだけで,通達に反するいわゆる違法な状態になります.そもそも当直というのは,月に4回までということになっていて,それも救急外来で患者をみる,というのではなく,入院患者の急な変化にそなえて,という業務が当直です.救急外来で患者の診察をする,というのは夜勤になり,時間外労働なのです.みなさん,資料をよくみてください」
「この資料3というのは,4月からの病院の医師の時間外勤務をまとめたものです.超過勤務時間の横の数字は,当直を時間外勤務に換算した場合の時間数です」
「もし,この病院の医者で死人が出た場合,過労死の認定がおります.普通の病院の管理者は病院長であるけれど,市民病院の管理者は市長ということになっています.つまり,市の責任である,と」
「4月以降には,この病院は急患を診たくても診ることができない状態になります.3月まで今までどおり急患をとっていて,4月になったらいきなり駄目です診れません,ではうまくいかない.まずは1月から,救急外来を原則停止し,市民に慣れてもらう必要があります」
仕立ての良いスーツを着て,誠実な表情で話を続ける三浦友和
「夏の議会の議事録がインターネットに載ってますよね.まあ,皆さん言いたいことをおっしゃっている.市民病院の医者の接遇が悪いとか,昨年度に比べて売り上げが落ちている,とかいろいろ書いてありました.接遇が悪いので,市民病院の医者にデパートでの体験実習をしたらどうか,なんてのまでありましたよね.病院のドクターはみんな見ています.そして市民に絶望しています.市民の代表である市会議員があの程度のことを言っているのだから,市民もそう考えているのだろうとね」
反論のできない市会議員たち.

あくる日,市民病院のあちこちで,職員がひそひそ話しをしている.
外来患者たちもひそひそ話しをしている.
小栗がインターネットの病院のホームページを見ている.“副院長から市民の皆様へのお知らせとお願い”という新着記事.

産婦人科病棟のナース控え室.菅野美穂戸田恵梨香が昼食をとっている.
「えりか,わたし,3月でやめて日赤に戻るんだ.部長室に行ってきた.看護部長は,仕方ないわね,って言ってくれた.なんか,ここでタケダと働いていてもつまないし」
「そうか,ミホちゃんは専攻科日赤だもんね.あたし,まだ決めてないよ.日赤にしようか思い切って大学にしちゃおうか.正職はもう締め切りだけど,2ヶ月臨時で,っていう枠ならまだ間に合うし.ここの看学で日赤っていうと,やっぱりなんていうかアレじゃない.どうせ主流じゃないのなら,大学もいいかなって」

分娩が進行している.妊婦の足の方に武田鉄矢菅野美穂がいる.
吸引をかけようとした武田.
「あっ」小さな声をあげる武田.「頭が逃げた」
菅野美穂「センセイ,子宮破裂?」
手が止まってしまう武田鉄矢
菅野美穂が叫ぶ.「えりか,オペ室に電話して.これから突入するわ」
あっという間にストレッチャーに患者を移し,ものすごい勢いで手術室に向かう菅野美穂
ひきずられていくようについていく武田鉄矢
恵梨香が2人に追いつく.手術室の師長が迎え入れる.
「5番よ」
ストレッチャーのまま,待ち構えていた北村が挿管してしまう.
菅野美穂イソジンを妊婦の腹部にぶちまけるようにかける.
そこへ小児科医の石井正則が走りこんでくる.
震える手で手袋だけの武田鉄矢が妊婦の腹部にメスを入れる.
取り出された赤ちゃんは石井にゆだねられ,石井が蘇生を始める.

「中,凄い出血だな.オペ台に移すぞ」と北村.
「今日は婦人科外来に三浦先生がいるはずだ,呼んできて」

気がつくと戸田恵梨香がガウンを着て,新しいセットを開け,手術器具を並べなおしている.手洗いを省略して手袋→ガウンの三浦友和がもう1枚手袋をはめている.
「ポロー」三浦友和が一言.
「家族来てる?来てたら入れて」

キャップとマスク,予防衣姿の患者の夫と母親が手術室に入ってくる.
「武田先生,ムンテラよろしく」と三浦友和
スイッチがはいって取り付かれたように手術を進める三浦友和
しゃべりながら助手を務める武田鉄矢
「よろしくおねがいします」と家族.ただし,家族の顔は三浦友和の方を向いている.

麻酔医室.
疲れ切った三浦友和がソファにもたれている.
北村が入ってくる.
「いちかばちかだと思った.武田先生はもう使い物になっていない感じだったし,怖かったよ」
「三浦先生,凄かった.神がかっていたよ」
「ああ,怖かった.心臓が破裂するかと思った」とうなだれて頭を振る三浦友和
「子どもどうなったかな.生涯2回目だよ.VBACの」

産婦人科病棟ナースルーム
菅野「怖かった.前に,何度も何度も,三浦先生から子宮破裂の怖かった話をきいていたの.鉗子をかけようとしたら児頭がなくなって,おなかがぽこって.三浦先生がいた頃はうちでは絶対にVBACはしなかったの.うちあたりではやっちゃいけないって」
戸田「ベビ,Nに行ったんだよね」
菅野「日赤も満床だったの,石井センセがむりむりに頼んだんだって.飛んでってベビの顔見たい」

麻酔医室.北村がいなくなったあともソファでぐったりしている三浦友和.微動だにしない.

なかのひと