対診のクライアント

わたしが働く病院は電子カルテなので,たとえば明日の対診依頼がどこの科からどんな内容で出ているか,を前の日のうちに知ることができます.で,仕事に余裕があると,あるいは依頼内容から(担当医は気づいていないかもしれないけれど)結構重症そうだと,前倒しで前の日のうちに診察をしたりしてしまうこともあります.

わたしはちょっと(とっても?)意地悪なひとなので,薬疹うたがい,なんて対診依頼が出たときには,かならず投薬歴を書くように!と注文をつけています.電子カルテから投薬歴をかっちり拾い上げるのは簡単そうで結構大変(これは電子カルテが安物のせい?)なのです.

でも,たとえば整形外科とか脳外科とかはいつも忙しそうに働いている親切な(そしてイケメンな)せんせいが多いので,投薬歴が書かれてなくても許してあげています.○○せんせいや○○せんせいがお昼ごはんを食べる時間を削ったり,おうちに帰るのが遅くなるのはかわいそうなので,苦になりませんの.

いつか,脳外科のせんせいが日曜朝に入力していた月曜日の対診依頼で実はひそかに重症っぽかったのを発見して診察しておいたら,お休みの日なのに,とすっごくお礼を言われてしまったことがあります.わたしにしてみれば,これも仕事だし,どういたしまして,なんだけどね.ありがとう,って言われると人間なのでやっぱりうれしい.

でも,ぜったいに許してあげないのは,某科の一部のドクターです.
「投薬歴記載してください」と言ったら,「薬疹ではないと思うので投薬歴は必要ないと思うが」と言われた.
朝,いきなり病棟に呼びつけられて,「この患者が帯状疱疹かどうか診察しろ,そうだったら手術はしないで帰すから」と言われたので,「対診の手続きをしてください」と言ったら,「もし帯状疱疹だったら入院しなかったことにするので手続きはできない.診断すればそれでいいから」と言われた.
なんていうエピソードに事欠かないのです.
対診の手続きをせずに,病棟のナースに,「こういう患者がいるので診てほしいんだけど」と言わせるのもお得意.
おとといも,あったまにくることがありましたの.内容はないしょ.
キングオブドクターの人々にとって,わたしはツールなのね.
某科のなかにもまあまともな対応をしてくれるせんせいもいるのですが,そういう人へのサービスはそうでないヤツにばれないようにこそっとしなければなりません.そうしないと,サービスを当然の権利とされちゃうから.

対診にはクライアントが2つの次元でいますの.ひとつは患者さん.もうひとつは患者さんの担当医のせんせい.担当医がイヤなやつだからといって患者さんに不利益になることはできないので,これはけっこうストレスですの.
今日は週末前なので,対診依頼が10件ありました.でも,依頼主のせんせいはマトモ系の人ばっかりだったので,あした,あさっての診察も苦になりませんわ.この感情ってほんとうはヘン.

なかのひと