ゴディバの思い出

ずっと昔,へき地の病院で働いていた時のこと.
バレンタインデーが近くなったのですが,その病院の近くでは明治とかロッテとか森永といったふつうのチョコレートしか買えないので,さすがにそれではと,救急外来のボードに「本日いません,よろしく」と書いて(もちろん当直医にはよくお願いして)1日がかりでデパートまでチョコレートを買いにいったわたし.でも,どうせ,病院のひとびとに配るものだし,というわけで,そんなに高級なのではなくて,500円から1,000円程度のたくさん積まれて売っているようなものをたくさん買ってきました.
その翌日,同じ研究室のわたしより7つか8つくらい年上のせんせいの机にデパートからの段ボールが届きました.中はすべてゴディバでしたの.わたしは思わず,掛算をしてしまいました!すごーい,というわたしにそのせんせいは,
「だって,○○せんせいがゴディバ以外いらないっていうからさ,ついでにみんなに買ったわよ」と.
○○せんせいというのは,なかなか結婚しないモテ系の独身のせんせいです.たぶん毎年処分に困るほどのチョコレートを貰うのは容易に想像つき,あまりおいしくない義理チョコや反応に困るような非義理チョコはもうたくさんと思っていてもおかしくありません.
その後の「ついでのみんな」の反応,についての記憶はないけれど,義理チョコでいきなり3,000円くらいのゴディバをもらってしまって,どうだったのかしら.

今ではゴディバはどこでも買えて(まあ,さすがにそのへき地の病院のまわりでは無理ですが),どんなおじさんのせんせいでも知っています.ポピュラーになりすぎて,スノッブな人には「ゴディバかよ」と言われてしまいそうです.でも,はずれチョコはないし,ボックスごと「さあどうぞ」というときの華やかさは他にはなかなかありません.
たとえば,ヴァローナのドメーヌチョコなんてのは食べる人を選んでしまいます.喜ぶひとは喜ぶけれど,みんながみんなおいしいと感じるかはわかりません.
たとえば,パトリック・ロジェなんてのは「こんなの知らない」と,相手によってはプライドを傷つけてしまうかもしれません.
「定番ですが,ゴディバです」
は,やっぱり最強かな,と思いますの.どこでも買えるといったって,そうそう自分で買って食べているひとはいないはず.全種類制覇なんてそうできません.

○○せんせいはその後たしか39歳で結婚しましたが,今でも,ゴディバ以外いらない,なんて言っているのかしら.

アクセス解析