さよなら子供たち

廃番のDVDはわたしの宝物.
寒い夜に,おうち映画館で観ましたの.

主人公のジュリアンは利発で可愛らしい男の子でした.
ユダヤ人少年のボネは生きていたら,どんな大人になったのかしら.
マテリアルなかんじのジュリアンのお母さんは,市民団体でがんばる主婦の対局にいるみたいな.
わたしがいちばん悲しいのは,寄宿学校にユダヤ人がいることを密告した炊事場の少年の存在です.裕福な家庭の子供たちが勉強をしたり,竹馬で遊んだり,ピアノの練習をしたり,の横で,ジャガイモの皮をむいたり,飼っている豚に餌をくれたりしていました.同じ年ごろのはずなのに,幾何もギリシャ語も関係のない生活.寄宿学校の面会日,ボネもさみしかっただろうけれど,炊事場の少年はどんな気持ちだったのでしょうか.

「恵まれている人はひとに多くを与えなければならない」と説教し,ユダヤ人をかくまった神父は,一方で盗みを働いた炊事場の少年をクビにしています.
礼拝のとき,ボネの口にはホスチアがいれられなかったシーン.
信念をもってユダヤ人をかくまった神父のしたことがすべて正しいかというとそうでもない.というよりは,何が正しいのかさえ,誰も決めることはできない.

反戦映画,ユダヤ迫害もの映画,とくくってしまうことは簡単だけれど,人間の優しいところと残酷なところ,自分ではどうにもならないこと,などが画面のなかにごちゃまぜになっていて,涙が止まりませんでした.

この映画を観ると,しばらくの間,頭のなかでフラッシュバックが起きてしまいます.
この映画をルイ・マル監督が撮った55歳になったときに観ると,その時のわたしは何を思うのかしら.