幻想のディア・ドクター

今日からディア・ドクターが封切りです.
でも,今のわたしは観にいくゆとりがなくて,残念です.

ずっと以前に,僻地の病院で働いていた時のことを思い出しました.
その病院の内科は,院長のほかは,地元開業医の息子であるところの中年ドクターたち(それぞれのお父様は当然爺医!という年代なのですが,まだまだ働いているという)と医局派遣の若者が主体でした.そのほかに,謎のドクターがいましたの.学生紛争のころのインターン闘争をやっていて流れ着いた?という噂で,ずーっとその病院で働いていたらしいのですが,通りすがりのわたしには真相はわかりませんでした.
爺医息子チームと若者チームは働きまくっていたのだけれど,その先生だけは結構医局でのんぴりしていることもあるのでした.コーヒーを飲みながら,いろいろな話をした記憶があります.文学や映画について語り,ちょっと田舎には不似合いなところあり,インテリなのです.
患者のひとびとからはとても慕われていましたわ.
だって,PLとかシップとか,たくさん処方してくれるんですもの.
口癖は「大丈夫」.
風邪だといえば,いつだって,「セフゾン,PL,ガスターダーゼン」です.
若者チームは「だってさ,あいつの患者ってA1C 10でも平気なんだせ」と,珍しいものをみるようなかんじでした.
もう,定年の頃と思うのですが,どうしているのかしら.

昔のインターン闘争がどんなものかは知らないけれど,たとえ東大の医学部を出ても,すぐに僻地の病院で働いてしまえば,我流になって,新興宗教の神様になってしまうようような.でも,それでも地元のひとびとはとりあえずハッピーのような.
偽医者ではないけれど,そんなかんじのひとがたぶん全国にはたくさんいるのかもしれませんわ.「せっかくここまで生きたんだから,おいしいものを食べなさい」と,処方はオイグルコンのみなんてかんじでね.

訪問看護部が軽自動車で山あいの家庭を回り,レビン・チューブの入れ替えやポーテックスの入れ替えまでしていた,そんな病院のことを少し思い出しましたの.