菊之助さまと労働時間

わたしはいわゆるドロッポ生活にはいってしまい,当直も呼び出しももうありませんの.
なので,今になって,「私の時間を返して」なんてふと考えてしまうことがありますわ.でも,人生の一時期において,仕事をしまくっていたおかげで,今の生活があるのだから,とも思います.そして今の生活のなかでも,新しいことへの勉強は続けなければ,と思ってますの.

よく,医者としてのトレーニングと時間外労働について,某m3などでは議論が交わされていたものですが,ほんとうに難しい.
医者のひとびとは,自分たちがものすごく働きすぎ!と言っているけれど,菊之助さまはもっと働いているのでは?,とふと思ってしまいましたの.ああいう日本に一人しかいないかけがえのない人と比べるのもまあ,失礼な話ではあるのだけれど(それこそ30年後は人間国宝かもしれないし).

菊ちゃんは,1年のうちの何カ月かは23日間とか25日間とかくらいぶっとおしで舞台ですわ.そして,数日間の後にまた別の舞台だったりします.1クールについて,2役とか3役とかをしています.つまり,今の仕事をしながら,次の月のお稽古を複数題しているものと思われます.また,それとは別に,踊りや清元とか三味線とかのお稽古もしているものと思われます.

わたしがまだ,たくさん働いていたころ,週末が3回つづけてつぶれると,その次の週末は寝たきり?に近くて,お出かけする気にもなりませんでした.菊ちゃんも舞台と舞台のあいだは寝たきりになっちゃっているのかしら?でも,そんなヒマはないはず.たぶん,次の舞台のためのお稽古の仕上げをしているはずです.

菊之助さまは働きすぎなので,舞台の間も毎週水曜日はお休みするくらいはできないのかしら,松竹さん!とも思います.そうすると,「私はその曜日にしか観に行けないのでお休みなんてけしからん!」というお客さんが出たりしてしまうかもしれません.あと,採算をとるために,観劇料金が今より13%くらい上がってしまうかも.そうすると,「値上げけしからん」というお客さんが出たりしてしまうかもしれません.

1年のうちのオフ月間数が少ないので,オフ月間数を増やすべし,となると,いう意見も出るかも.でも,そうすると,菊之助さまがあんな役をやったりこんな役をやったりの経験値が狭まってしまうのでは,とも思います.あの役もやってこの役もやっての上でできる役もあるのだろうし.菊之助さまは高校を卒業してからはや15年もお仕事しまくっているにもかかわらず,「初役なので勉強です」なんて言っているわけで.

自分に技術が蓄積される職業においてcontinuous educationと労働時間,そして仕事のためのバックヤードの時間というのは永遠の課題であるのだと思いますわ.