怖い花子

行ってきてしまいましたの,新橋演舞場
1日座席に座って菊たんを観ているだけで,精神的にも肉体的にもぐったりになってしまいましたの.

朝起きて,朝ごはんを食べて劇場に出勤(?)し,吉野山を踊り,魚屋宗五郎でおなぎさんを演じて,道成寺を踊り,髪結新三の勝奴を演じる,なんていう生活を25日間休みなしに続けている菊たん.精神的な緊張と肉体的な疲労ってどのくらいなのかしら.来月だって,4役もあるってことは,おうちへ帰ってからも,きっと来月の準備をしていることでしょう.

吉野山静御前は,それは綺麗でため息がでるようでした.なので,道成寺の花子もそれはそれは綺麗に違いない,と思っていましたの.
でも,道成寺の花子を見ていると,綺麗だけれど,それより怖くて怖くて仕方がありませんでした.隙なく踊り続ける菊たん.微笑みを浮かべたり,恍惚としたり,睨んだり,いろいろな表情もあるのだけれど,その表情はどこへ向かっている表情なのか,と思うと怖いのです.お仕事というのとはちょっと違う.もうどこかの世界に自分を売り渡しちゃったのではないかしら,とも思いましたわ.

劇場に来る前は,道成寺が一番最後の演目なら,きっと幸福感で胸いっぱいになっておうちへ帰れるのに,なんで最後でないのかしら,と思っていたけれど,道成寺が最後の演目だったら,交感神経優位のままで,大変だったかもしれません.

今日の終わりは勝奴でちょっとリラックス.おめめうるうる,胸元チラリ.上目づかいにちらちら周りを見たり,キセルで煙草を吸ったりしているだけで,菊たんの周囲にはフェロモンがまき散らされているのでした.わたしがお熊ちゃんだったら,白子屋に戻らずに,勝奴のオンナになってしまいそうですわ.