10時?ルールの思い出

ずっと前にへき地の病院で働いていたときの話.

病院の医局では,注文表があって,お昼を頼むひとは頼む日のところに○をつけるのでした.
すると,11時半になると病院の食堂からお昼ごはんが上がってきます.ただしおかずだけ.
ごはんはおおきなジャーに,お味噌汁は寸胴のお鍋にはいってまとめて上がってきます.
自分でごはんとお味噌汁をよそっていただきます.お代わり自由.

その病院はちょっと悲惨なくらい混雑していて,私は最大で1日200人の診察をしたこともありました.まあ,コモンな病気がほとんどなのだけれど.
多くのひとびとがお昼にはお昼ごはんを食べることができなかったりしていました.
すると,夕方には手のつけられていないおかずがずらり.
10時?(はっきりとした時刻は忘れましたわ)ルールというのがあって,夜10時?を過ぎたら,残っているものはだれが食べてもいい,というきまりになっていましたの.
わたしはさすがにおかずに手をつける,ということはなかったけれど,みかんやバナナをかすめていました.
2年目,3年目,4年目の内科の男の子たちは,夜10時?をすぎると,晩ごはんです.1日に2回同じおかずを食べるのってどんな気分だったのかしら.
彼らにとっては,彼女がはるばる遊びにこようものなら誰かに通報され,ビデオ屋さんでは健全なビデオしか借りられず,という精神的監禁生活でもありましたの.

クリスマス・イブの週末,猛吹雪で交通が寸断されました.
単身赴任のせんせいたちはおうちに帰ることができなくなりました.
わたしは帰れなくなったせんせいの一人から10,000円をあずかり,吹雪のなか,町で1軒?のケーキ屋さんへケーキを買いに行くことになりました.凍えながら歩いてお店に行くと,一番大きなチョコレートのバタークリーム!のケーキが運よく売れ残っていて,それを買いました.医局でメリー・クリスマスでしたの,ああ.

若き日のもっくん主演のファンシィダンスのような映画をいつかつくってみたいですわ.

県庁所在地くらいのところにあるお医者のうちに生まれ,都会の医大を卒業したのに,親に戻って来いといわれてしぶしぶ地元国立大に入局する主人公.しばらくしたらど田舎の関連病院へ!いろいろどたばたがあって,1年後,ひと回り成長して田舎からもどってきます.
彼をしごきつつも成長を見守る先輩,離れ離れの本命の彼女,田舎での浮気騒動,ほろっとする老人患者さんや薄命美少女とのエピソード,3月の別れ.
今の臨床研修医制度ではちょっとドラマチックにはできないかもね.

なかのひと